重篤な後遺障害が残った被害者の施設利用費|後遺障害・後遺症でお困りの方は弁護士法人心まで

重篤な後遺障害が残った被害者の施設利用費

  • 文責:弁護士 森田清則
  • 最終更新日:2025年11月25日

1 施設利用費を基礎とした将来介護費の請求

交通事故に遭って重篤な後遺障害が残った被害者の方が施設に入所して介護を受けている場合、被害者側から、加害者に対して、入所している施設の施設利用費を基礎として将来介護費用の請求を行うことがあります。

もっとも、施設利用費の中には、居住費や食費など、被害者の方が事故に遭わなかったとしても支出をしていた可能性のある費用が含まれていることがあります。

それでは、入所している施設の施設利用費を基礎として将来介護費を請求する場合、どの範囲で賠償が認められるのでしょうか。

なお、将来介護費の日額についてはこちらでご説明しています。

2 賠償の範囲に含まれるか否かの基本的な考え方

仮に交通事故に遭わなかったとしても支出していたはずのものについては、交通事故によって発生した損害とはいえませんので、原則として賠償の対象になりません。

そのため、施設利用費に含まれる居住費や食費部分が将来介護費として賠償の対象となるか否かは、それらが「健常な場合の日常生活においても支出が必要であったか否か」という視点から検討されることになります。

3 居住費について

施設利用費のうち、居住費部分については、交通事故に遭う前の被害者の方の生活実態によって賠償の範囲が変わり得ます。

例えば、交通事故に遭う前は賃貸物件に居住していたが、事故に遭って施設に入ったために事故前に住んでいた物件は引き払ったという場合は、居住費部分は、健常な場合の日常生活においても支出が必要であったものとして捉えられやすくなります。

対して、交通事故に遭う前は持ち家に住んでおり、家賃等の支払いがなかったという場合は、居住費部分は、健常な場合の日常生活においては必要のなかった支出として、賠償の対象となりやすくなると思われます。

4 食費について

施設利用費のうち、食費部分については、被害者の方が事故に遭わなかったとしても支出していたはずであるとして、賠償が否定される傾向があります。

もっとも、食事としての性格のみならず、治療としての性格も有する食費については、賠償の対象として認めた裁判例もあります。

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